コラム

イマーシブ(没入体験)イベントの演出事例:深い価値体験づくり

近年、イベント参加者自身がコンテンツの世界に入り込み深い感動や学びを得られる「没入体験」への注目が高まっています。コンテンツの魅力を堪能してもらうにはどんな方法があり、どんな工夫が出来るか。過去の事例から紐解いていきたいと思います。

目次

■イマーシブ(没入体験)とは?

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「没入体験(イマーシブ体験)」とは、視覚・聴覚だけでなく、嗅覚や触覚、空間の雰囲気など五感すべてに訴えかけ、まるでその世界に入り込んだように感じさせる体験を指します。自分が物語の一部として関わるような能動的な体験であり、映画や舞台をはじめ、近年ではVR/AR、プロジェクションマッピングなどの技術の進化により、よりリアルで感覚的な演出が可能になっています。現在ではエンタメ業界のみならず、ブランドの世界観を伝えるショールームやポップアップイベント、教育・観光・マーケティングの分野でも活用が進んでいます。コロナ禍を経てリアル体験の価値が再認識され、デジタルと融合した新たな体験設計として、イマーシブ演出は今後さらに注目されていくでしょう。

■なぜ今イマーシブ体験が求められるのか

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私たちが日々接する情報量は、かつてないほど膨大になっています。SNSのタイムライン、ネットニュース、動画コンテンツなど、気づけば膨大な「情報の波」にさらされており、1つひとつの体験が記憶に残りにくくなっているのが現代です。情報過多な社会の中で注目されているのが、イマーシブ(没入型)体験です。

イマーシブ体験はただ「見る・聞く」だけの受動的な体験ではなく、自分がその空間の一部として存在する能動的な体験であることから、深い没入感と感情的なつながりを生み、強い印象を残します。

こうした体験は、エンターテインメント業界ではすでに広く導入されており、たとえばテーマパークのアトラクションや、プロジェクションマッピングを活用した舞台演出、AR/VRを駆使したゲームなどがその代表例です。現在ではその波はさらに広がり、教育、観光、ビジネス、医療、マーケティングなど、さまざまな分野へと応用されているほどです。

このように、イマーシブ体験は「伝える」から「感じさせる」へと価値の軸を移しつつあります。単なる情報発信ではなく、記憶に残る体験として受け取ってもらうために、「没入感のある演出」が今、求められているのです。

■イマーシブコンテンツの種類

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没入体験を提供するコンテンツは、その手法や技術によって多岐に分類できます。ここでは、代表的なイマーシブコンテンツの種類を見ていきましょう。

360度映像・VR(仮想現実)・AR(拡張現実)

デジタル技術の進化により、360度映像やVR、ARを活用したイマーシブコンテンツが急速に普及しています。VRヘッドセットを装着することで、参加者は現実とは異なる仮想空間に没入し、あたかもその場にいるかのような臨場感を体感できます。一方、ARは、現実の風景にデジタル情報を重ね合わせることで、新しい体験価値を提供します。

プロジェクションマッピング

建物や空間全体をキャンバスに見立て、映像を投影するプロジェクションマッピングは、ダイナミックで幻想的な世界観を創り出すことができます。映像、音響、照明などを同期させることで、没入感をさらに高める演出が可能です。

イマーシブシアター

観客が舞台と客席の境界線を越え、俳優と同じ空間で物語を体験するイマーシブシアターは、近年注目を集めています。観客は物語の進行に影響を与えたり、登場人物と直接コミュニケーションを取ったりすることで、より主体的に物語に没入することができます。東京のイマーシブ・フォート東京はその代表的な施設と言えるでしょう。

体感型アトラクション

テーマパークやミュージアムなどで見られる体験型アトラクションは、五感を刺激する様々な仕掛けを通じて、参加者に没入感を提供します。3D映像、特殊効果、インタラクティブな要素などを組み合わせることで、物語やコンセプトをよりリアルに体感できます。

没入型アート

アートの分野においても、没入体験を提供する試みが広がっています。空間全体を作品の一部としたインスタレーションや、デジタル技術を駆使したインタラクティブアートなど、参加者が作品の中に身を置くことで、新たな美的体験を得ることができます。

■イマーシブイベントの事例

国内外では、様々な分野で没入体験を取り入れた革新的なイベントが開催されています。ここでは、いくつかの注目すべき事例をご紹介します。

イマーシブ・フォート東京

 イマ―シブフォート東京出典元:https://immersivefort.com/

東京のお台場に位置するイマーシ
ブ・フォート東京は、日本初のイマーシブ・シアターをメインとしたエンターテイメント施設です。来場者は、複数のイマーシブ・アトラクションを通じて、まるで映画や物語の登場人物になったかのような体験を体感できます。予測不能な展開、迫力のある映像や音響、そして空間全体を使った演出によって、圧倒的な没入感を得られるのが特徴です。


イマーシブミュージアム

イマ―シブミュージアム出典元:https://immersive-museum-osaka.jp/

イマーシブミュージアムは、名画の世界に没入できる場所です。画家が見た物語が動き出し、絵画の中へ入り込む体験ができます。2025年の大阪では、ゴッホと北斎、モネと広重など東西の絵画が出会い、映像と音楽でつながる独自の世界観を楽しめます。

 

イマーシブイベント×ミスト演出

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弊社ではミストに特化した演出を提案・提供しています。ここからはイマーシブイベントにおける「ミスト演出」の強みと魅力にフォーカスし、実際の導入事例も交えながら、なぜ今「ミスト」が注目されているのかを掘り下げていきます。

イマーシブ体験に求められるのは「空間の臨場感」

魅力的なイマーシブ体験を創造するには、視覚や聴覚だけでなく触覚・嗅覚など五感すべてに訴えかけることで、まるでその世界に“入り込んだかのような感覚”を生み出すことが大切です。
そこにミスト演出も取り入れてみます。

たとえば、

  • プロジェクションマッピングによって風景を変化させ、

  • 立体音響で空間の奥行きを生み出し、

  • ミストやスモークで空気の湿度や質感までコントロールする

上記の総合演出により観客はその場の「空気ごと」物語に入り込むことができるようになります。

■ミスト演出がイマーシブ体験にもたらす5つのメリット

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1. 視覚演出の拡張:光と組み合わせて幻想的な空間に

ミストは光と相性が非常に良く、照明やレーザーと組み合わせることで、光が「空間を漂う」ような幻想的な演出が可能です。霧を通して光が拡散することで、まるで“光そのものに触れられる”ような錯覚を生み出すことができます。

2. 触覚的な没入感:空気の変化が体験の深度を変える

超音波ミストは、粒子が非常に細かく、肌に触れても濡れないため、観客の動きや演出を妨げません。しかし微細な水分が空気に混ざることで、「湿度のある空間」を体感的に伝えることができ、五感に訴える演出が可能になります。

3. 空間の区切り・導線の演出にも

ミストは、物理的な壁を作らずに空間を柔らかく変化させることができます。シーンの切り替えや、物語の転換点など、視覚的にも心理的にも効果的な「区切り」として機能します。

4. 短時間での設置・撤収が可能

雲海のようなミストを発生させることができるミストジェネレーターは水道設備不要のタンク給水式なので、設置・撤収が比較的簡単です。一時的なポップアップイベントや、ツアー型の展示会などでもフレキシブルに導入できます。

5. 環境負荷が低く、安全性も高い

弊社で提供しているミスト装置は加熱式ではなく超音波式のため、やけどのリスクもありません。ミストの原料が水なので、環境汚染の心配が無く国宝級の重要文化財でも使用実績があります。スモークマシンにありがちな火災報知器の誤作動もなく、屋内イベントでも安心して使用いただけます。

■弊社のイマーシブ演出事例

弊社ではミストに特化した演出を提案・提供しています。弊社製品をご活用いただいた事例を紹介いたします。

綾鷹イマーシブ茶会

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参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000912.000001735.html

『綾鷹 雲海イマーシブ茶会』は忙しい大都会で美しい自然の象徴である雲海を愉しみ、綾鷹の新ブランドメッセージである「自分のリズムでいこう。」を味わうことが出来るイベント。本来であれば限られた条件でしか見ることのできない自然現象の雲海を人工的に発生させることでイベントを実現しています。
本イベントの核である雲海。その発生装置のひとつに弊社のミストジェネレーターをご使用いただきました。

ミストジェネレーターの詳細はこちら

2024年4月、原宿に新しくできた商業施設である東急プラザ原宿「ハラカド」。そんな都会の屋上テラスで雲海に包まれながらお茶を楽しむひとときは、他にはない癒し体験ができる新感覚のイマ―シブ体験として話題を呼びました。非現実的な大量の霧(ミスト)に包まれ、風に流れる霧をゆっくり眺めながらお茶を飲んで心を落ち着かせることができるため、お茶だけでなくミスト演出によるリラックス効果も上手く活用した斬新な企画でした。

※綾鷹、あやたか は The Coca-Cola Company Limited の登録商標です。©The Coca-Cola Company


イマーシブシアター「鳳明館物語」

 

参考:https://www.egopression.com/homeikanstory

歴史ある旅館「鳳明館」を舞台に繰り広げられたイマーシブシアター「鳳明館物語」。公演入口にてサイドブローイング型ミストスクリーンをご採用いただきました。

サイドブローイング型ミストスクリーンの詳細はこちら

旅館「鳳明館」は夏目漱石や森鴎外らをはじめとする文豪が愛した本郷にあります。今回の「鳳明館物語」では小説家が執筆に集中するために最適な宿とされ、書いた「文字」が具象化するという設定で使われました。

文字が浮かび上がるという表現の一つにミストスクリーンを導入いただいています。観客は公演入口で浮かび上がっている「いろは歌」を通り抜けることで一見ファンタジーな設定を実際に体験することができ、これからはじまる物語に没入するきっかけとなっています。

お客様からは「文字の中を通り抜けられるという不思議な体験が楽しかった」と嬉しいお声もいただきました。

 

UWS ENTERTAINMENT-アクアリウム宇宙旅行-UNDER WATER SPACE

 

日本初となる宇宙×アクアリウムをコンセプトにした「アクアリウム宇宙旅行 - UNDER WATER SPACE」では、ブローダウン型ミストスクリーンをご採用いただきました。会場入り口で案内人が空中に浮かぶように現れ、まるで異世界への入り口のような存在感を放ちました。

ブローダウン型ミストスクリーンの詳細はこちら

案内人の向こう側には次の展示空間が透けて見え、リアルと映像の境界があいまいになることで、まさに非現実的な世界へ足を踏み入れる没入体験(イマーシブ体験)を演出しています。また、この先に待つオブジェや光の演出に期待感とワクワク感を一気に高めてくれる効果もあります。

単なる映像装置としてだけでなく、ストーリーテリングと空間演出を兼ね備えたミストスクリーンは、「UNDER WATER SPACE」のようなコンセプチュアルなイベントにおいて、その世界観を深く浸透させる重要な装置として機能しています。

 

 ミスト演出は、空間に「感情の深度」を与える

イマーシブイベントの真価は、「どれだけ参加者の心を揺さぶるか」にあります。映像や音だけではなく、空気・湿度・肌触りといった要素が合わさることで、記憶に残る体験となります。
ミストは、空間に「余韻」や「静寂」「神秘性」など表現の難しい要素を与えることができる希少な演出素材です。

 

■まとめ

没入体験イベントは参加者に強い印象を与え、ブランドや作品への共感を生み出します。没入感を本格化するためには空間全体を使った演出や五感に訴えかける体験を提供することが重要です。

イマーシブイベントにおいて、ミスト演出は「空気ごと演出する」ための大きな武器になります。視覚的なインパクトだけでなく、心理的・感覚的な没入感を深める技術は、今後ますます注目されていくでしょう。

“体験を記憶に変える”演出のひとつとして、ぜひミストの導入をご検討ください。